
最終更新日:2026年10月5日
花粉症対策としては、マスクや眼鏡の使用、洗濯物の部屋干しといった「花粉を避ける」対策が基本になります。
加えて近年では、花粉症を考えるうえで「腸内環境」という視点にも関心が寄せられています。
花粉症は鼻や目の症状が一般的ですので、腸との関連性を意外に感じる方も少なくないでしょう。
しかし、花粉症は免疫の過剰な反応によって起こるアレルギー疾患の一種であるため、免疫機能のバランスを調整することは大切な花粉症対策となります。
そして、免疫にとって非常に重要な臓器のひとつが「腸」なのです。
そこでこの記事では、花粉症が起こるしくみを分かりやすく紹介しながら、花粉症対策としても注目されている腸内細菌「酪酸菌」について、そのはたらきを詳しく解説します。
腸内環境を整え、免疫のバランスを調整することで、体の内側から花粉症対策をしたいという方は、ぜひ最後までご覧ください。
花粉症の患者は年々増加しており、2019年のデータでは、日本人の42.5%が悩まされているという報告もあります。
さらに近年は発症の低年齢化も進み、症状の重い患者さんの増加傾向もみられます。
花粉症の対策をするためにも、まずは、なぜ花粉症が起こるのか、そのしくみから確認していきましょう。
花粉症は「アレルギー疾患」のカテゴリーに分類される疾患のひとつです。
現在、世界人口の25%程度、国内では50%程度が、何らかのアレルギー疾患に罹患していると推測されているほど、アレルギー疾患は現代人にとって見過ごせない健康課題のひとつといえるでしょう。
そもそもアレルギーとは、本来は体外から侵入してくる細菌やウイルスなどの有害なものを排除するしくみである「免疫」が、過剰にはたらいてしまっている状態のことです。
つまり、通常であれば「外敵」に対して働く防御システムが、外敵以外にまで働いてしまっている状態といえます。
身体に害のないものに対してまで免疫機能が働くと、過剰に炎症反応が引き起こされてしまい、鼻炎などの症状が現れるようになります。
つまり、「花粉」という異物に対して、過剰なまでの免疫反応が起こることで、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が現れるのが花粉症です。このように、花粉症の発症には免疫機能が密接に関わっています。

免疫には、生まれながら備わっている「自然免疫」と、生まれた後のさまざまな経験を通じて発達する「獲得免疫」があります。
このどちらも異物から体を守るためにはたらくしくみであり、いわば免疫の「アクセル」といえます。
しかし、アクセルが強すぎると、攻撃する必要のないものにまで攻撃を仕掛けてしまいかねません。
そこで、免疫システムには、過剰な反応を抑える「ブレーキ」も備わっています。
このブレーキの要とも言えるのが「制御性T細胞(Treg)」と呼ばれる免疫細胞です。
制御性T細胞が効果的に機能しなければ、免疫のアクセルが強くなりすぎてしまい、過剰な免疫反応を生じてしまう可能性があります。
このように、免疫が正常にはたらくためには、アクセルとブレーキのバランスが重要であり、アクセルが強すぎたり、ブレーキが弱すぎたりすると、アレルギーが起こりやすくなってしまうのです。
そのため、花粉症対策を行うためには、「免疫を高める」というよりも、「免疫のバランスを整える」という視点が大切になります。

免疫を担っている細胞は、異物が体内に入り込まないように、「粘膜」に多く分布しています。
なかでも腸や腸の粘膜は、免疫にとって極めて重要な部位であり、免疫を担う細胞の約70%は腸に存在しているともいわれています。
そのため、免疫のバランスを考えるうえで、腸の状態(腸内細菌や腸内環境)は非常に重要なのです。
腸の中には、膨大な種類・数の腸内細菌が暮らしており、その様子があたかもフローラ(花畑)のようであることから「腸内フローラ」と呼ばれています。
この腸内フローラは、便通の維持や改善といった腸のはたらきだけではなく、免疫システムを含めた、全身の機能とも密接に関与しています。
そのため、アレルギー疾患である花粉症を理解するうえでも、腸内フローラが重要な視点のひとつといえます。
酪酸菌(らくさんきん)とは、「酪酸」を生み出す機能を有する腸内細菌のことです。
酪酸菌が生み出す酪酸は、腸の粘膜のエネルギー源となるほか、過剰な免疫反応を抑える仕組みとの関わりも報告されており、その有用性が注目されています。
花粉症に対しても、酪酸が効果的に働きかけている可能性があり、特に以下の3つの作用が重要になります。
1つ目が、酪酸と大腸のバリア機能(腸から異物が入らないようにする仕組み)との関わりです。
酪酸は大腸の主要なエネルギー源として使用されており、大腸のバリア機能の維持に重要な役割を果たしています。
大腸のバリア機能は、体内への不要な物質の侵入を防ぐ仕組みのひとつであり、酪酸はその働きを支える物質として知られています。実際に、リーキーガット症候群のように、腸のバリア機能が低下してしまう状態では、過剰な免疫反応との関連が指摘されていますので、その土台を支える酪酸の存在は重要と考えられます。
2つ目が、酪酸と免疫の「ブレーキ」との関わりです。
免疫のバランスの維持には、免疫のブレーキとなる制御性T細胞(Treg)という免疫細胞が重要な役割を担っています。
そして、酪酸は、未分化のT細胞から制御性T細胞への分化を誘導するとの研究成果が報告されており、免疫の過剰な反応を抑えるためにも、酪酸が重要な機能を果たしているということが分かります。
このように、酪酸は免疫のブレーキが適切にはたらく環境を支える物質として注目されています。
3つ目が、酪酸と炎症との関わりです。
制御性T細胞には、免疫の過剰な反応を抑えるはたらきがあるため、免疫反応による炎症を緩和することで、花粉症に伴う鼻炎などのつらい症状を和らげることができる可能性があります。
このような制御性T細胞への分化を誘導することが報告されているのが「酪酸」であり、その酪酸を生み出す酪酸菌も重要な腸内細菌のひとつなのです。
このように酪酸菌は、腸の粘膜のバリア機能の維持や、免疫のバランス維持に重要な制御性T細胞への分化との関わりなど、花粉症やアレルギーとの関係が注目されています。こうした背景から、腸内環境を整えることは、花粉症を考えるうえでも重要な視点とされています。
腸内環境を整える方法として、プロバイオティクスとプレバイオティクスと呼ばれるアプローチが知られています。
腸内環境を整えるうえでは、これらの違いを理解しておくことが大切です。
まず「プロバイオティクス」とは、人の健康に有益と考えられる善玉菌(有用菌)そのものや、善玉菌を含む食品を摂取することです。
酪酸菌のほか、乳酸菌、ビフィズス菌、糖化菌などもプロバイオティクスとして知られています。
一方の「プレバイオティクス」とは、善玉菌のエサを摂取することで善玉菌のはたらきをサポートすることです。
オリゴ糖や発酵性食物繊維などを取り入れることで、善玉菌が働きやすい環境を作ることが目的です。
さらに、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせて摂取することが「シンバイオティクス」です。
善玉菌とそのエサをあわせて摂取することで、それぞれの特性を活かしながら腸内環境へのアプローチを行う考え方です。
さらに近年注目されているのが「ポストバイオティクス」で、これは食品成分を材料に、腸内細菌が生み出す代謝産物を活用するという考え方です。
たとえば、酪酸を含む短鎖脂肪酸は、このポストバイオティクスのひとつとして知られています。
なお、酪酸菌が含まれている食品はぬか漬けなど限られているため、普段の食事にプラスして、酪酸菌が配合された整腸剤やサプリメントなどを活用することも選択肢のひとつとなります。

くしゃみや鼻水、目のかゆみ、微熱など、花粉症のつらい症状に悩む方は多くみられます。
花粉症を考えるうえでは、基本的な花粉症対策を行うことに加えて、腸内環境にも目を向けることが大切です。
腸内細菌のなかでも、酪酸を産生する酪酸菌は、大腸のバリア機能の維持や、免疫のバランス維持に重要な制御性T細胞への分化との関わりなどから、花粉症やアレルギーとの関係が注目されています。
とはいえ、腸内細菌はひとつの菌だけではたらいているわけではありません。
乳酸菌やビフィズス菌、糖化菌といったさまざまな菌が連携してはたらくことで、腸内では酪酸がつくり出されます。
だからこそ、酪酸菌を含むさまざまな腸内細菌がはたらきやすい環境を整えるためにも、腸内フローラ全体のバランスを意識することが大切です。
腸内環境づくりは、一日で結果が出るものではありません。日頃から腸内環境を意識した食生活や生活習慣を心がけることも大切です。
なお、花粉症の症状がつらいときには我慢をせず、医療機関を受診して適切な治療を受けることも大切です。