
最終更新日:2026年10月5日
腸活への関心が高まるなかで、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌(有用菌)のほか、さまざまな腸内細菌の特徴やはたらきが紹介されています。
近年、そのなかでも腸内で「酪酸(らくさん)」をつくり出す「酪酸菌」は、医療や腸内細菌研究の分野で注目を集める腸内細菌のひとつです。
腸内細菌には無数の種類があり、そのはたらきも多種多様です。酪酸菌は、腸内で酪酸を産生する代表的な腸内細菌として知られています。
そこでこの記事では、腸内細菌である「酪酸菌(らくさんきん)」がなぜ近年注目されているのか、その研究背景や特徴、腸内での役割、腸活への活かし方について解説します。
「近年注目されている腸内細菌について知りたい」「酪酸菌が腸活で注目される理由を知りたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
乳酸菌やビフィズス菌は以前から知られている有用菌ですが、近年は腸内細菌そのものだけでなく、腸内細菌が産生する物質にも注目が集まっています。
なかでも酪酸は、従来から大腸上皮の主要なエネルギー源として知られていました。
さらに、酪酸が体内の受容体を介して代謝や免疫、神経系など全身と関わる可能性が報告されており、その働きの解明が進んでいます。
こうした研究の一部は日本人研究者によって世界に先駆けて報告され、酪酸は近年の腸内細菌研究において特に注目される物質のひとつとなってきました。
また、長寿地域として知られる京都府京丹後市の高齢者を対象とした研究では、京都市内の高齢者との比較において、京丹後市の高齢者では、酪酸菌が多かったことが報告されています。
このような研究の進展を背景として、酪酸を産生する酪酸菌への関心が高まってきたのです。
酪酸菌は、「酪酸」を産生する腸内細菌として知られています。酪酸は短鎖脂肪酸のひとつで、大腸の主要なエネルギー源として利用されます。
さらに、酪酸には、受容体を介して代謝に影響を及ぼすほか、免疫、神経系など、身体全体に働きかけるといったさまざまな働きがあることも明らかになってきています。
こうした酪酸のはたらきが明らかになるにつれて、酪酸を産生する酪酸菌にも注目が集まるようになりました。
私たちの腸内には100兆個もの腸内細菌が生息しており、「腸内フローラ」と呼ばれる集団を形成しています。
健やかな腸内フローラを維持するためには、腸内細菌の種類や数だけでなく、それぞれの菌が活動しやすい環境が保たれていることも重要です。
酪酸は、大腸の粘膜上皮における酸素の消費を促し、腸内を酪酸菌やビフィズス菌などの嫌気性菌が生育しやすい低酸素環境に保つことにも関わっています。このように酪酸菌は、酪酸を産生することを通して、ほかの有用菌が棲みやすい環境づくりにも関わっています。
そのため酪酸菌は、腸内フローラ全体を支える重要な腸内細菌のひとつとして注目されています。

酪酸菌という特定の菌だけを増やそうとするのではなく、酪酸菌をはじめとする腸内細菌がそれぞれはたらきやすい環境を整えることが重要です。
そこでここでは、今日から実践できる腸活のポイントをご紹介します。
多様な腸内細菌によって構成される腸内フローラを健やかに保つには、複数の菌同士が共生することが大切です。
ひとつの有用菌(善玉菌)だけを摂取するのではなく、「菌のリレー」を意識した腸内細菌とそのエサとなる栄養素の摂取が重要です。
「菌のリレー」とは、腸内で酪酸がつくられるまでに、複数の菌がバトンをつなぐように連携しながらはたらく仕組みのことを指します。
まず、食物繊維やオリゴ糖をエサとして利用する菌が糖を産生し、その糖を乳酸菌やビフィズス菌が利用して乳酸や酢酸を産生します。さらに、酪酸菌がこれらの乳酸や酢酸を利用することで、酪酸が産生されます。

このように、酪酸の産生には複数の腸内細菌が段階的に関わっています。そのため、酪酸菌だけを増やそうとするのではなく、多様な有用菌とそのエサとなる栄養素をあわせて摂取することが大切です。
また、有用菌を含む食品についても特定のものに偏るのではなく、さまざまな種類の発酵食品を取り入れることが、腸内フローラの多様性を保つうえで役立ちます。
腸内細菌のエサとなるのが、食物繊維やオリゴ糖です。
特に、腸内細菌に利用されやすい食物繊維は「発酵性食物繊維」と呼ばれています。発酵性食物繊維は、イモ類、豆類、海藻類、全粒穀物、根菜類などに含まれており、これらの食材を幅広く取り入れることが、健やかな腸内環境を保つことにもつながります。
酪酸菌を育てるためには、菌が活動しやすい環境を整えることも重要です。
そのひとつとして注目されている栄養素がビタミンB1です。
多くの酪酸菌は、自らビタミンB1をつくることができないとされています。
そのため、腸内のビタミンB1が不足すると、酪酸菌の活動に影響を及ぼす可能性があります。
ビタミンB1は、ヒトのエネルギー産生や腸のぜん動運動にも関わる栄養素です。
玄米や豚肉、大豆など、ビタミンB1を含む食品を日頃の食事に取り入れ、酪酸菌を含む腸内細菌が活動しやすい環境を整えていきましょう。
食事以外にも、規則正しい生活リズムを心がけ、十分な睡眠をとることは腸内環境を健やかに保つうえで重要です。
また、運動と腸内フローラや酪酸菌との関係についても研究が行われています。
酪酸菌を含む腸内細菌が活動しやすい環境づくりのためにも、食事・睡眠・運動を含めた生活習慣全体を見直していきましょう。

酪酸菌は、近年の腸内細菌研究において注目されている腸内細菌のひとつです。酪酸に関する研究が進み、その一部は日本人研究者によって世界に先駆けて報告されるなど、医療・研究分野での関心も高まってきました。
酪酸菌が産生する酪酸は、大腸の主要なエネルギー源となるほか、腸内を低酸素環境に保つことで、ほかの有用菌が活動しやすい環境づくりにも関わっています。
また、酪酸菌を育てるためには、発酵性食物繊維や多様な有用菌を意識して取り入れることも大切です。
さらに、酪酸菌を含む腸内細菌が活動しやすい環境を整えるために、バランスのよい食事や適度な運動、十分な睡眠を心がけることも重要です。
こうした研究の進展を踏まえると、酪酸菌は、医療・研究分野からも関心が寄せられ、腸活を考えるうえで意識したい腸内細菌のひとつといえます。酪酸菌と、それを支える多様な腸内細菌のつながりにも目を向けながら、日々の腸活に取り組んでいきましょう。