
最終更新日:2026年9月30日
「腸活」という言葉がすっかり定着し、腸内細菌に関する情報を目にする機会も増えました。
私たちの腸内には無数の腸内細菌が棲みついており、その種類やはたらきは実にさまざまです。
さらに近年では、解析技術の進歩を背景に腸内細菌の研究が世界中で進められており、腸内細菌に関する新たな知見も蓄積されています。
そんな中、いま特に注目されているのが「酪酸菌(らくさんきん)」という腸内細菌です。
そこでこの記事では、腸内細菌の基本的な働きを整理しながら、今注目の酪酸菌について、乳酸菌やビフィズス菌といったおなじみの菌との違いを解説していきます。
また、腸活のポイントもご紹介しますので、ご自身に合った腸活方法を見つけてみて下さい。

そもそも腸内細菌とは、その名の通り、私たちの腸内に棲みついている細菌たちのことです。
「細菌」と聞くと、風邪や食中毒を引き起こす“ばい菌”のイメージを持たれるかもしれませんが、腸内には私たちの健康と関わるさまざまな細菌が共存しており、そのはたらきも多様であることがわかっています。
外から入ってきた食べ物の残りかすなどをエサにしながら、腸のなかで増えたり減ったりを繰り返し、私たちの身体と共生している存在です。
なかでも、多くの腸内細菌が活動しているのが大腸です。
私たちが食べたものは、消化・吸収されてエネルギーになるだけでなく、その一部が大腸まで届き、腸内細菌のはたらきによってさまざまな物質へと変えられていきます。
また、腸内細菌は、一種類の細菌だけが単独ではたらいているわけではなく、多種多様な菌が互いに影響し合いながら共存しています。
こうした腸内細菌の集まりは「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれています。
その全体像を理解しておくことで、それぞれの菌が担っている役割も見えやすくなります。
私たちの腸内には100兆個もの腸内細菌が棲みつき、「腸内フローラ」という集団を形成しています。
多種多様な腸内細菌が互いに影響し合いながら、ひとつの生態系をつくっています。
また、腸内細菌の種類は1000種類以上存在するといわれており、私たちが口にした食べ物や生活習慣によって、その構成バランスは日々変化していきます。
そのため、腸活を行う際には、個々の腸内細菌に注目するだけではなく、腸内フローラ全体のバランスや多様性にも目を向けることが大切です。
腸内細菌は、私たちの身体に対するはたらきによって、大きく3つのタイプに分けて考えられています。
身体に良い作用をもたらす「有用菌(善玉菌)」、身体に良くない作用をもたらす「有害菌(悪玉菌)」、そしてそのどちらでもない「日和見菌(ひよりみきん)」です。
こうした分類は腸内細菌を理解するための目安として用いられていますが、近年では単純に、「善玉菌」「悪玉菌」だけでは捉えられないこともわかってきています。実際には、菌同士が影響し合いながら腸内環境を維持しており、それぞれの菌が異なる役割を担っています。近年はそのひとつである酪酸菌にも注目が集まっています。
なお、これからご紹介する乳酸菌やビフィズス菌、糖化菌、そして酪酸菌は、いずれも有用菌(善玉菌)の仲間です。
ひとくちに有用菌(善玉菌)といっても、その性質やはたらく場所はそれぞれ異なります。
腸内細菌は、種類によって酸素を必要とする度合いが違ったり、活動する場所も小腸だったり大腸だったりとさまざまです。
ここでは、よく知られている乳酸菌やビフィズス菌に加え、近年注目されている第3の善玉菌「酪酸菌」の特徴についても解説します。
乳酸菌は、腸内細菌のなかでも最もよく知られている菌のひとつです。
ヨーグルトやチーズ、乳酸菌飲料などに含まれており、日常的に取り入れやすい有用菌といえます。
乳酸菌は酸素を必要とせず、小腸と大腸の両方で活動するタイプの菌で、糖を分解して「乳酸」をつくり出すといった働きがあります。
ビフィズス菌も、乳酸菌と並んでおなじみの有用菌です。
ビフィズス菌は酸素を苦手とするタイプで、主に大腸で活動し、乳酸や酢酸をつくり出すといった特徴を持ちます。
ビフィズス菌は自然の食品中にはあまり存在しないため、ビフィズス菌入りのヨーグルトや乳酸菌飲料などが利用されています。
糖化菌も、腸内細菌の働きを支える菌のひとつです。
糖化菌は酸素を好み、主に小腸で活動する菌で、納豆菌も糖化菌の仲間に含まれます。
腸内では複数の菌が連携しながら活動しており、糖化菌は「菌のリレー」の出発点となる菌のひとつとして知られています。
そして、最近注目を集めている腸内細菌が「酪酸菌」です。
酪酸菌は、「酪酸(らくさん)」と呼ばれる短鎖脂肪酸を作り出す特徴があります。
酸素を苦手とし、主に大腸で活動するタイプの菌で、乳酸菌やビフィズス菌と同じ有用菌の仲間であり、酪酸を産生することが大きな特徴です。
酪酸菌が作り出す酪酸は、短鎖脂肪酸の一種であり、その多くが大腸の粘膜上皮のエネルギー源として利用されます。大腸の粘膜上皮細胞が必要とするエネルギーのうち、約60〜80%は腸内細菌がつくる酪酸でまかなわれているともいわれており、大腸の機能を支えるうえで重要な物質です。

腸内細菌の研究が進むなかで、酪酸菌への関心も高まっています。
酪酸菌がつくり出す「酪酸」という物質についての研究が進み、腸内環境との関わりをはじめ、さまざまな知見が報告されていることも、その理由のひとつと考えられています。
ここでは、酪酸菌が話題になっている理由を紹介します。
酪酸は「短鎖脂肪酸」の1つで、短鎖脂肪酸には酪酸のほかに酢酸やプロピオン酸などがあります。
これらの短鎖脂肪酸は、人の健康との関わりについて研究が進められており、なかでも酪酸は大腸との関わりから注目されています。
酪酸は大腸の主要なエネルギー源として利用され、大腸の正常なはたらきを支えています。
さらに、酪酸には大腸内の酸素消費を促すことで、酸素を苦手とする酪酸菌やビフィズス菌が活動しやすい環境づくりに関わることが知られています。
このように酪酸は、大腸の正常なはたらきを支える重要な物質なのです。
近年は、酪酸菌が産生する酪酸と免疫系や神経系、内分泌系などとの関わりについても研究が進められています。
たとえば、免疫の分野では、酪酸が大腸のバリア機能の維持や、免疫の調節に関わる可能性が報告されています。
このほかにも、アレルギーや大腸がん、糖尿病などとの関連について、国内外で研究が進められています。
こうした研究の広がりも、近年酪酸菌への関心が高まっている背景のひとつと考えられています。

腸活では、酪酸菌をはじめとする腸内細菌が活動しやすい環境を整えることが大切です。
ここでは、無理なく続けられる腸活のポイントをご紹介します。
すべてを一度に始める必要はありませんので、「これならできそう」と思えるものから取り入れてみてください。
腸内で酪酸がつくられるまでには、複数の菌が連携する「菌のリレー」と呼ばれる流れがあります。
まず食物繊維やオリゴ糖をエサに糖化菌が糖をつくり、その糖を乳酸菌やビフィズス菌が利用して乳酸や酢酸をつくり、それを酪酸菌が利用して酪酸をつくる、という一連の流れこそが「菌のリレー」です。
そのため、酪酸菌だけでなく、菌のリレーに関わるさまざまな腸内細菌が活動しやすい環境を整えることが大切です。
たとえば、糖化菌は納豆から、乳酸菌はヨーグルトやキムチなどの発酵食品から取り入れるなど、さまざまな食品を組み合わせて取り入れることを意識してみましょう。
また、酪酸菌を含む食品は限られているため、酪酸菌が配合された整腸剤やサプリメントなどを活用することも選択肢のひとつです。
菌のリレーの出発点となるのが、腸内細菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖です。
なかでも、腸内細菌がエサにしやすく発酵・分解されやすいものは「発酵性食物繊維」と呼ばれ、イモ類、豆類、穀類、キノコ類、ゴボウやニンジンといった野菜、キウイやリンゴなどの果物に含まれています。
こうした食品を日々の食事に取り入れることは、菌のリレーを支えるうえでも大切です。
ビタミンB1は、細胞が活動エネルギーを生み出すときに欠かせない栄養素です。
多くの酪酸菌は自らビタミンB1をつくることができないため、酪酸菌の活動を支える栄養素のひとつと考えられています。
ビタミンB1は玄米や豚肉、大豆などに豊富に含まれ、ニンニクやタマネギに含まれるアリシンと組み合わせると、腸管で吸収されやすいアリチアミンに変化します。
そのため、これらの食品を日々の食事に取り入れ、ビタミンB₁を不足させないよう心がけることも大切です。
最近流行っている腸内細菌として、いま注目されているのが「酪酸菌」です。
酪酸菌がつくり出す酪酸は、大腸のエネルギー源となるだけでなく、腸内細菌が活動しやすい環境の維持に関わることが知られています。また、酪酸と免疫系などとの関わりについても研究が進められています。
とはいえ、腸内細菌はひとつの菌だけではたらいているわけではありません。
糖化菌、乳酸菌、ビフィズス菌、そして酪酸菌へと続く「菌のリレー」がつながることで、健やかな腸内環境が維持されます。
発酵性食物繊維やビタミンB1を意識した食事、多様な発酵食品、そして無理のない運動習慣など、毎日の生活の中で、できることから少しずつ取り入れてみましょう。
酪酸菌をはじめとする腸内細菌が活動しやすい環境づくりを意識することが、腸活の第一歩につながります。