
最終更新日:2026年9月30日
夏は体重が落ちやすい季節というイメージとは裏腹に、夏のあいだにかえって体重が増える「夏太り」を実感する方も少なくありません。
食欲が落ちて、あっさりした食事が増えているのに、なぜか体重は減らない。
その原因は、暑さによって変わる食事の内容や飲み物の選び方、暑さや夏バテによる身体活動量の低下にあります。
さらに、近年注目されているのが、こうした夏の生活習慣の変化と「腸内細菌」との関わりです。
そこでこの記事では、夏太りが起こる仕組みを整理したうえで、夏太りと腸内細菌の関係を解説しながら、腸内で短鎖脂肪酸である「酪酸」をつくり出す酪酸菌のはたらきを紹介します。
また、今日から始められる夏の腸活のポイントをご紹介しますので、ぜひ毎日の生活習慣に取り入れてみて下さい。

夏太りには、身近な生活習慣の変化が関係している可能性があります。
暑さによって食事の内容が変わり、飲み物や清涼飲料水などを摂る機会が増え、身体を動かす時間が減るといった夏特有の生活習慣の変化によって、知らないうちにエネルギーの収支が崩れてしまうのです。
食欲が落ちて「食べる量は減っている」と感じていても、実際には摂取している内容と消費しているエネルギーのバランスが乱れ、結果的に太りやすい状態になっている方も少なくありません。
さらに、食事の偏りや活動量の低下は、腸内に棲む細菌(腸内細菌)にとっても、大きな環境の変化につながる可能性があります。
ここでは、夏太りにつながりやすい、注意すべき夏の生活習慣をご紹介します。
ご自身にあてはまっていないか、チェックしてみて下さい。
暑さで食欲が落ちると、そうめん、冷やし中華、アイスなど、のどごしの良い単品メニューに偏りがちです。
こうした食事が続くと、主食や甘いものが中心となり、たんぱく質やビタミン、ミネラル、そして食物繊維などが不足しやすくなります。
食物繊維は腸内細菌のエサにもなる重要な成分のひとつですが、夏場の単品メニューが続くと、知らず知らずのうちに食物繊維の摂取量が低下し、腸内細菌のバランスにも影響を及ぼす可能性があります。
食欲がない夏場であっても、例えばそうめんの具材に野菜や卵、肉類、ツナなどの具材を組み合わせるなど、バランスの良い食生活を心がけることが大切です。
汗をかく季節は、水分補給の回数が増えます。その際、飲み物の選び方も注意したいポイントです。
一般的な清涼飲料水やスポーツドリンクには糖質が含まれているので、気づかないうちに糖質を摂りすぎている可能性があります。
脱水を防ぐためには、水分だけではなく塩分やミネラルの補給も重要です。暑い環境で大量の汗をかいた場合などにはスポーツドリンクが役立ちますが、糖質が含まれていることも意識しておきましょう。
猛暑日が続くと、外出や運動を控えて室内で過ごす時間が長くなります。
1日の活動量が落ちれば、消費するエネルギーも減少し、結果的に太りやすくなってしまうと考えられます。
さらに、冷房の効いた室内と屋外との温度差や暑さによる睡眠不足などは自律神経のバランスに影響し、だるさや胃腸の不調につながることもあります。その結果、ますます身体を動かす機会が減ってしまうこともあるでしょう。
「食事は減っているのに体重は減らない」「食欲が落ちてるはずなのに太ってしまっている」といった夏太りは、このような複数の要因が重なって生じている可能性があります。
夏太りが気になるという方は、日々の生活習慣を見直し、無理のない範囲で身体を動かす機会をつくることも大切です。

ここまで見てきたように、夏太りには食事内容の変化や飲み物の選び方、活動量の低下などの生活習慣が関係していると考えられます。こうした生活習慣の変化は、体重だけでなく、腸内で暮らす腸内細菌にも影響を与える可能性があります。
私たちが食べたものは、消化・吸収されてエネルギーとなるだけでなく、腸内細菌のエサにもなり、腸内環境にも影響を及ぼします。
そのため、食事内容や生活習慣が変化しやすい夏は、腸内環境にも変化が生じる可能性があります。
ここでは、夏太りを腸内細菌や腸内環境の観点から考えてみます。
私たちの腸内には100兆個もの腸内細菌が棲みつき、「腸内フローラ」という集団を形成しています。
腸内フローラのバランスは、疾病のほか、生活習慣の乱れや加齢、ストレスなど、さまざまな要因によって変化することがあります。
偏った食事も腸内フローラの乱れにつながる可能性があるため、日ごろからバランスの良い食事を心がけることが大切です。
夏は「糖質に偏った食事」「食物繊維不足」「活動量の低下」「睡眠の乱れ」などが生じやすい季節でもあります。こうした生活習慣の変化が、腸内フローラに影響を与えている可能性があります。
腸内細菌は、腸に届いた食物繊維を発酵・分解して「短鎖脂肪酸」をつくり出します。
短鎖脂肪酸には、酢酸、プロピオン酸、そして酪酸といったものがあります。
酢酸やプロピオン酸の一部は大腸で消費されますが、ほとんどは大腸の粘膜から吸収されて血流に乗り、肝臓や筋肉、腎臓などに運ばれてエネルギー源や脂肪をつくるための材料になります。
一方、酪酸はその多くが直接、大腸の粘膜上皮のエネルギー源として使われており、大腸の粘膜上皮細胞が必要とするエネルギーのうち、約60~80%は腸内細菌がつくる酪酸でまかなわれていると言われています。
このように、酪酸は腸内フローラを育むために重要な物質であり、そんな酪酸を作り出す腸内細菌は非常に重要な存在であることが分かります。
腸内環境と体重や代謝との関わりについては、近年研究が進められている分野のひとつです。
たとえば、腸内細菌がつくり出す酪酸と、生活習慣病の一つである2型糖尿病との関連を示唆する報告があります。
食物繊維を豊富に含む食事を摂取した群では、糞便中の酪酸の濃度に増加が認められ、さらにインスリンの分泌を促進するGLP-1というホルモンが多くつくられ、長期的な血糖値の指標であるHbA1cの低下がみられたことが報告されています。
GLP-1には食欲に関わる作用があることが知られており、現在では2型糖尿病や肥満症の治療薬にも応用されています。また、腸内細菌がつくり出す酪酸とGLP-1との関連も報告されており、腸内細菌や酪酸が代謝に及ぼす影響について研究が進められています。
もちろん、体重の増減は食事量や活動量など複数の要因によって決まるものであり、腸内細菌だけで説明できるものではありません。
しかし、食生活や運動習慣が変化しやすい夏にこそ、「腸内環境を整える」という視点を持つことも、健康的な体重管理を考えるうえで大切な要素のひとつといえるでしょう。

酪酸菌とは、腸内で「酪酸」をつくり出す有用菌(善玉菌)の一種です。
乳酸菌やビフィズス菌と同じ善玉菌の仲間ですが、酪酸菌は、その名の通り、酪酸を産生することが大きな特徴です。
酪酸菌がつくり出す酪酸には、大腸のエネルギー源になるだけでなく、「大腸内の酸素を消費させるはたらき」があることも知られています。
こうしたはたらきによって、ビフィズス菌をはじめとした善玉菌が住みやすい環境づくりを支え、健やかな腸内フローラの維持につながると考えられています。
近年では、酪酸をはじめとする腸内細菌由来の物質と、食欲や体重管理との関わりについても研究が進められています。
夏は食生活の変化や食物繊維不足などによって腸内環境が乱れやすい季節だからこそ、酪酸菌を意識して腸内環境を整えることも、夏の健康管理を考えるうえで大切な視点のひとつといえるでしょう。
腸内で酪酸がつくられるまでには、複数の菌が連携しながらはたらく「菌のリレー」のような仕組みがあります。
腸内では、食物繊維やオリゴ糖をエサに糖化菌が糖をつくり、その糖を乳酸菌やビフィズス菌が食べて乳酸や酢酸をつくります。さらに、それらを利用して酪酸菌が酪酸を産生する、という流れがあり、まさにリレーのような仕組みになっています。
このリレーを円滑に繋いでいくためにも、食事内容が偏りがちな夏場こそ、バランスの良い食生活を心がけることが重要です。
夏太りが気になるとき、まずは「腸内細菌が元気にはたらける状態」を整えることから始めてみることもおすすめです。
夏バテをしやすい時期に無理な食事制限や水分制限をしてしまうと、体調を崩してしまうこともあります。極端なダイエットをするのではなく、「腸内環境を整える」という視点で生活習慣を見直してみることが大切です。
ここでは、暑い季節でも無理なく続けられる「腸活のポイント」をご紹介します。
すべてを一度に始める必要はありませんので、ご自身の生活の中で「これならできそう」と思えるものから取り入れてみてください。
食欲がない暑い日でも、そうめんやそばだけで済ませず、わかめ、オクラ、めかぶ、キウイなどを加えてみましょう。
食物繊維が豊富な食材だけではなく、乳酸菌や納豆菌、ビフィズス菌といった菌が含まれる、納豆やヨーグルトなどの発酵食品を取り入れるのもよいでしょう。発酵性食物繊維は腸内細菌のエサとなり、酪酸菌による酪酸産生を支えるはたらきがあります。
食欲がない日でも、無理なくスッキリと食べられる食材を見つけることも大切です。
夏にはこまめな水分補給が欠かせませんが、糖類を含む飲料が習慣化していないか振り返ってみましょう。
日常的な水分補給は水やノンカフェインのお茶を基本にするなど、甘い飲み物は量と回数を決めて楽しむことが大切です。
一方で、脱水を防ぐためには、塩分やミネラルの補給も重要です。大量に汗をかいた場合などには、スポーツドリンクや経口補水液などを活用することも役立ちます。
飲み物の種類を上手に使い分けながら、水分や塩分を適切に補給しつつ、糖質やエネルギーの摂り過ぎにも注意しましょう。
ビタミンB1は、細胞が活動エネルギーを生み出すときに欠かせない栄養素です。
多くの腸内細菌は自分でビタミンB1を作ることができますが、酪酸菌は自分でビタミンB1をつくれないため、酪酸菌の活動を支える栄養素でもあります。
玄米や豚肉、大豆などに豊富に含まれ、ニンニクやタマネギに含まれるアリシンと組み合わせると、腸管での吸収がよいアリチアミンに変わります。
夏は糖質中心の食事になりやすく、ビタミンB1を意識して補うことが大切です。また、ビタミンB1は酪酸菌の活動を支える栄養素のひとつでもあるので、意識して補うようにしましょう。
運動には腸のぜん動運動を促すはたらきがあり、運動習慣をつけることは酪酸菌をはじめとした腸内細菌にとってもよい影響を与える可能性があります。
夏場は早朝や日没後など気温の低い時間帯を選び、こまめな水分補給と休憩をとりながら、無理のない範囲で行いましょう。
急激に激しい運動を行うと、夏バテや脱水、熱中症などにつながるおそれもありますので、できるだけ涼しい時間や環境を見つけて、継続的に身体を動かす習慣をつくるようにすることが大切です。
酪酸菌を増やすためには、食物繊維やオリゴ糖などを摂取して腸内細菌を育てることに加え、酪酸菌そのものを摂取する方法もあります。
乳酸菌やビフィズス菌を含む食品は比較的身近ですが、酪酸菌を含む食品は多くありません。そのため、酪酸菌を配合した整腸剤やサプリメントを活用することも選択肢のひとつです。
普段の食生活で発酵性食物繊維を意識しながら、必要に応じて酪酸菌を補給することで、腸内環境づくりをサポートすることができるでしょう。
夏太りの背景には、糖質に偏った食事、食物繊維不足、活動量の低下、睡眠や自律神経の乱れといったさまざまな要因が重なっています。
これらはいずれも、腸内細菌や腸内フローラ、腸内環境にも影響を与える可能性があります。
だからこそ、夏太りが気になるときは、「腸のはたらきや腸内環境を意識する」ということが大切です。
発酵性食物繊維とビタミンB1を意識した食事、水分補給の見直し、涼しい時間帯の運動など、無理なくできることから始めてみましょう。
夏は食生活や生活習慣の変化によって腸内環境も乱れやすい季節です。発酵性食物繊維やビタミンB1を意識するとともに、酪酸菌を含む整腸剤やサプリメントなども活用しながら酪酸菌そのものを補うことも、腸内環境づくりの一つの方法です。酪酸菌をはじめとする腸内細菌が元気にはたらける環境づくりを心がけることも、夏の健康管理を考えるうえで大切な視点のひとつといえるでしょう。