「腸活」基本情報

脳やストレスと酪酸の関係

腸内細菌が脳に影響を及ぼす?

生まれてすぐの頃から私たちの腸内に棲みついている腸内細菌。腸内細菌はおなかの調子を整えるだけでなく、全身の健康維持にも重要な役割を担っていることがわかってきています。

そのなかで注目されているテーマの1つが、腸内細菌と脳との関係。これまで脳と腸は互いに作用を及ぼし合う関係にあることはわかっていましたが、現在は腸内フローラの存在も含めて考えられるようになっています。

精神疾患などの脳が関係する不調には無関係と考えられていた腸内細菌ですが、近年は腸内細菌が原因の1つととらえられることも。なかでも、腸内細菌の産生する酪酸が脳の機能に影響を与える可能性が報告されています。

酪酸が脳に与える影響

2007年に、米国とフランスの共同研究チームは酪酸に抗うつ作用がある可能性を報告しています。マウスに酪酸を投与したところ、うつ病の治療薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と比べて記憶を司る海馬が増大することが確認されました。さらに、酪酸を投与されたマウスのほうが、神経細胞の成長に不可欠なBDNF(脳由来神経栄養因子)が増加していたのです*1

2018年には、米国の研究グループが老年マウスを用いて腸内細菌が作り出す酪酸の脳に対する効果を検証した研究結果を発表。食物繊維が豊富なエサの摂取によって腸内の酪酸菌が作り出す酪酸が増えると、脳内の免疫担当細胞であるミクログリアによる炎症が軽減されたと報告しています*2

神経科学分野の国際的な学術雑誌「Neuroscience Letters」には、「酪酸は脳の治療薬としての大きな可能性を持っている」と紹介され(下図)*3、今後のヒトでの研究の進展が期待されています。

  • 酪酸の神経保護作用と酪酸治療または高繊維食により
    改善の可能性があるとされる疾患
  • 酪酸の神経保護作用と酪酸治療または高繊維食により改善の可能性があるとされる疾患
  • 酪酸の神経保護作用と酪酸治療または高繊維食により改善の可能性があるとされる疾患

ストレス性の病気との関係

下痢や便秘、腹痛といったおなかの不調が続いているにもかかわらず、検査をしても腸に炎症や潰瘍[かいよう]といった異常が認められない病気、過敏性腸症候群(IBS)。IBSには脳が感じるストレスが関係していると言われています。

中国の研究グループは酪酸菌に着目し、酪酸菌の摂取によるIBS症状の改善効果を検証しました。下痢型のIBS患者200人を2つの群に分け、酪酸菌もしくはプラセボ(擬似薬)を4週間投与したところ、酪酸菌摂取群ではプラセボ群と比べて症状が改善。さらに症状が中等度および重度な例でその効果が高かったと報告されています(下図)*4

  • 過敏性腸症候群患者における酪酸菌投与による症状変化
  • 過敏性腸症候群患者における酪酸菌投与による症状変化
  • 過敏性腸症候群患者における酪酸菌投与による症状変化
  • 奏効率:効果が表れた割合のこと

脳の機能やストレス性の疾患との関連も明らかになりつつある酪酸。そんな酪酸は、生活習慣の改善で増やすことができます。腸内の酪酸を増やす方法は、「食事や運動で腸内の酪酸を増やす!」で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。

参考文献

*1 Schroeder FA et al. Biol Psychiatry. 2007 Jul 1;62(1):55-64. Epub 2006 Aug 30.

*2 Matt SM et al. Front Immunol. 2018 Aug 14;9:1832

*3 Bourassa MW et al. Neurosci Lett. 2016 Jun 20;625:56-63

*4 Sun YY et al. Sci Rep. 2018 Feb 14;8(1):2964

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